拍手の御礼になりそうな短いお話を考えてみました。うーん。
とりあえず一話書いてみたのですが…もう何話か書いたらまとめて拍手の御礼として上げてみましょうか。
小話書くなら、お題的なものを見つけてきても良いかもしれませんね。タイトル考えるのが死ぬほど苦手病を患う私にとって素敵なお題はそれだけで助かる&インスピレーション閃けてとても良いです。大抵最後まで書ききれないけど。
とりあえず一話書いてみたのですが…もう何話か書いたらまとめて拍手の御礼として上げてみましょうか。
小話書くなら、お題的なものを見つけてきても良いかもしれませんね。タイトル考えるのが死ぬほど苦手病を患う私にとって素敵なお題はそれだけで助かる&インスピレーション閃けてとても良いです。大抵最後まで書ききれないけど。
この世界のどこかには、いろんなお店が集まる町があるという。
その町に行く方法は特にはっきりとは分かっておらず、秘密の入り口を見つけるしかない、欲しいものを強く念じる事だ、夢の中で知らず知らずのうちに迷い込む事がある、など、様々な噂が飛び交っているが、どれも確証のある方法ではない。
人が考えうる全てのものが買う事が出来るのだという、幻の町。
その町に足を踏み入れ、まず一番最初に目に飛び込むのが、真正面の「お店屋さん」だった。
一人の男が、外の看板に興味を持って店の中に入ってきた。何せ、「お店屋さん」というそのままの名前が書かれた看板なんて初めて見たのだ。一体何を売っているのか、お店を売るとは一体どういう事なのか、男の興味は尽きなかった。
そんな男の目の前に現れたのは、ほとんど何もないがらんとした部屋の中央にひとつだけおいてあるカウンターと、その向こうでこちらをにこにこと微笑みながら見つめる店主らしき人物一人だけであった。
お店屋さんは、その笑顔のまま男に頭を下げた。
「いらっしゃいませ、ようこそお店屋へ」
男はおそるおそるカウンターに近づいて、お店屋さんに尋ねかけた。
「お店屋さん、という看板が出ていたけど、ここは一体何を売っているお店なんですか?」
するとお店屋さんはああ、という声を上げて再び男に頭を下げた。
「初めてこの町に来られたお客さんでしたか。いかにも、ここは看板に書かれている通りのお店ですよ」
「するとここでは、お店を売っているという事ですか?」
「その通りです」
お店屋さんの言葉に男は目を瞬かせた。お店を売るお店なんて、今まで聞いたこともなかったのだ。それならば、と男はお店屋さんに身を乗り出してみせた。
「それじゃあどんなお店を売っているんですか?」
お店屋さんは、変わらずにこにこと笑いながら答えた。
「私はお店屋さんですから、お店でしたら何でも売っていますよ」
あまりにも簡単にお店屋さんはそんな事をいうので、疑っていた男は少しだけ試してみることにした。適当なお店をあげて、本当にお店を何でも売っているのか確認しようと思ったのだ。
「お花屋さんは売っていますか?」
すると、待ってましたとばかりにお店屋さんは店の壁を指し示した。つられて男が視線を向ければ、そこには入り組んだ町の様子が書き込まれた大きな紙が貼ってあった。おそらくこの町の地図だろう。お店屋さんらしき一角だけが赤く塗りつぶされている。
きょとんとする男に、お店屋さんは腕を上げたまま言った。
「お花屋はここを出て右に曲がり、3つ目の角を左に曲がってしばらく行った先の右手にありますよ」
お店屋さんが言ったのはそれだけだった。男はしばらく考え込むようににこにこと笑うお店屋さんを見つめ、確認のためにもう一度聞いた。
「それじゃあ、帽子屋さんは」
「帽子屋は右に曲がってからすぐに左に曲がり、ずっと真っ直ぐ進んだ突き当りを右に曲がりますとすぐ正面に見えますよ。黒い看板が目印です」
すらすらと答えるお店屋さん。そしてそれ以上のものがお店屋さんから出てこない事を知り、男は落胆した様子で肩を落とした。
「なんだ、お店屋さんってつまり、そういう意味か……」
何て事は無い、お店屋さんは確かにお店を売っていた。ただし、その手に触れる事の出来ない、情報のみを。つまり言い換えればこの町の案内屋さんなのだ。それなら最初からそうと言ってくれれば分かりやすかったのに。
全てを理解した男がとぼとぼとお店から出ようとすると、その背中に声をかけられた。
「お客さんお客さん、忘れていますよ」
「え、何を?」
男が振り返れば、ずっと変わらないあの笑顔のまま、お店屋さんは掌を上にしたまま、男に向かって右手をつきだしていた。
「お花屋と帽子屋のお代、まだ頂いていませんよ」
呆れた男はその手に叩きつけるように示されたお金を渡すと、大きな足取りでお店から出て行った。
「毎度!またのお越しをお待ちしております」
誰もいなくなったお店の中でお辞儀をしたお店屋さんは、変わらずにこにこと笑っていた。
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